"不死鳥" のなく頃に

「キコニアのなく頃に」考察【ネタバレ有】

記事一覧

1.はじめに

● キコニアのなく頃に ~"アンフェア" なゲームの面白さ~ 


2.ガントレットナイト内通者について
○ クロエ裁判
● 内通者は誰だ!? 〜「クロエ裁判」で論じたかったこと〜

3.霊素・神のシナリオについて
○ 霊素の原料は『人間』なんだよ 〜本当は怖いキコニア世界〜
○ 人間の脳で作るコンピュータ  〜本当は怖いキコニア世界〜
● 本当は怖いキコニア世界 【解説編】

4.恋愛系
● 都雄は男の子? 女の子?
○ ネオ東京ラブストーリー

5.各陣営考察
● 3人の王 = ギュンヒルド 説
●「神のシナリオ」阻止派 vs 推進派 の闘い
● 「パンドラの箱」と「粘土の少女」

6.世界構造について
○ 1000年後の物語
● Phase 1の世界構造について(前編)
● Phase 1の世界構造について(後編)

7.まとめ
● 妄想で再解釈したキコニア世界 (Phase 1)
● 一問一答 100問

8.ハオルシア
ユートピアの暗号に挑む1
ユートピアの暗号に挑む2

9.その他
・ Phase 1 ファーストプレイメモ
竜騎士07の物語の作り方:TRPGの手法

● 考察系記事     
○ 妄想(二次創作含む)

ユートピアの暗号に挑む2

今回は具体的な言語の考察へと進んでいく。
まずは、前記事で述べた通り「日本語、英語、フランス語、エスペラント語サンスクリット語」の5言語に候補を絞る。日本語、英語以外の言語については、筆者も初めて学ぶが、とにかく「暗号を解く」という観点に絞って情報を集めることにする。

0.手掛かりの整理

まず、暗号文の手掛かりを整理しておく。

  1. アルファベットの数: 音楽記号22文字とA, B, C, E, M(5文字)の計27文字。A, B, C, E, Mを暗号化が外された文字と見るならば計22文字。
  2. 文字の出現頻度: 前記事の図を再掲(図1)。□, ♪の頻度が突出して高い。
  3. 語尾の文字: 言語によって、語尾に来やすい文字に特徴がある。暗号を右から読むか、左から読むかは分からないため、暗号文の元画像における2文字以上の単語の左端の文字(青)と右端の文字(赤)をピックアップした(図2)。原文を左から右に読む場合、□が語尾に来る頻度が突出して高く、逆方向に読むならば、♪ ♯ . が語尾に来る頻度が高い。(図3)
  4. 単語の文字数で色分けする(図4)。少数文字(2文字, 3文字)の単語はパターンが少ないため、各言語の前置詞や接続詞などの頻出単語と比較すると当たりをつけることができるかもしれない。
  5. 一文字の単語: 文中では □, ↑, ♭, ♯ が一文字で出現する。特に □ は3回も出てくる。(図4)

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図1 文字の出現頻度

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図2 各単語の左端の文字(青)と右端の文字(赤)

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図3 単語の右端と左端の文字の出現頻度

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図4 少数文字の単語を色分け(紫:1字、黄:2字、緑:3字、橙:4字、白:その他)

以上の手掛かりを元に、各言語の考察へと進んでいく。


1.日本語(ローマ字)
  • アルファベット: 母音5文字+子音14文字(K,S,T,N,H,M,Y,R,W,G,Z,D,B,P)の19文字。音楽記号22文字だけだとしても3文字余ることになる。
  • ローマ字は、子音と母音が必ずセットになるため、以下の制約がある。
    (1)語尾は、母音またはNでなければならない。
    (2)異なる種類の子音は2つ以上続いてはいけない。(例外1:K, S, T, N, H, M, R, G, D, B, Pの後ろにYが続く場合。例外2:Nの後ろに子音が続く場合)
    (3)同じ種類の子音は3つ以上続いてはいけない → 暗号に3つ以上同じ文字が続いてところはないのでOK.
  • 上項の(1)を満たすためには、右端、もしくは左端の文字が6種類(母音+N)以下でなくてはならないが、アルファベットを除いても、それぞれ15, 12種類ある(図3)。どう割り振っても(1)を満たすことができない。このことから、ローマ字の線は薄そうである。

 

まとめ

  • ローマ字を表すのに必要な文字数が少ないため、暗号の文字が余る
  • 語尾の文字の種類の数を考えるとローマ字の線は薄そう





2.英語
  • 文字: アルファベット26文字。暗号の文字の種類とかなり近い数である。
  • 一文字で成立する単語: “I”(私は)と “a”(不定冠詞)が候補となる。試しに、□ = “i”, “a” と置いてみる。どちらの場合も、元の暗号文を左から右に読むことになる。
  • 語尾: 英語の語尾の頻出文字の候補に、”e” や ”s” がある。“e”は、名詞・動詞・形容詞にかかわらず、”*a*e” (make, take, late, name, save...) や、”*i*e” (like, time, nice...)の形の単語が多い。”s” は複数形、三人称単数などで使われる。ただし、読む方向が左から右である場合、□が語尾にくる回数が多いので □ = “e”, “s” となり、前項と整合しない。

 

以下に、汎用かつ頻出と思われる単語をリストアップする。

    • 冠詞: a, an, the
    • 前置詞: at, by, in, of, on, to, for, with, fromなど
    • 人称代名詞: I, he, my, me, her, his, him, she, you, they, them, their など
    • be動詞: am, be, is, are, was, were
    • 助動詞: can, may, will, must, shall, should など
    • 指示詞: here, that, this, there, these, those 
    • 接続詞: as, if, or, so, and, but, yet, until, while など
    • 疑問詞: how, who, why, what, when, where, whose
    • その他: no, not, do, than

 リストを眺めていると、暗号文における2文字の単語の出現頻度がやや少ないことが気になった。暗号の中には2文字の単語が3種類しか出てこない。参考までに「望郷の歌」の英語の歌詞は、冒頭4行だけでan, be, do, in, is, my, no, of の8種類が出てくる。英語ならばもっと2文字の単語がでてきても良い気がする。

 

まとめ

  • アルファベットの数はかなり近い
  • 一文字の単語の候補: “i”, “a”
  • 読む方向: 左から右
  • 語尾に頻出の文字の候補:”e”, “s”
  • 2文字の単語の出現頻度が少ない(?)





3.フランス語
  • 文字: ラテンアルファベット26文字 + アクセント3種(´ ` ^)、トレマ(¨)、セディーユ(ç)、合字(œ)を含む特殊文字15文字
  • 特殊文字について:
    (a) 全て書き下すと15文字(é, à, è, ù, â, ê, î, ô, û, ë, ï, ü, ç, œ, æ)
    (b) アクセント変換表を用いて分解すれば6種類(' ` ^ : , &)
  • (a)の場合計41文字、(b)の場合でも計32文字と多い。また、(b) の場合は、暗号の文字2つで特殊文字1つに対応する(例:â → a^)ため、文字数の判定がややこしくなる。
  • 一文字の単語: 場所を表す前置詞 “à” が文頭に来て大文字になるときはアクセントを省略することが多いらしいので、"a", “à” が候補となる。□ = "a", “à”と置いてみると、原文は英語と同じく左から右に読むことになる。もう一つの候補として、”Il y a ~”(~がある)の"y"を考えたが、"y"は必ず”a”とセットで使うため一文字の単語が連続する形になり、そのようなものは暗号文の中にないため除外。
  • 語尾: フランス語の語尾に来やすいものは、子音だと”s”, “t”、母音だと”e”である。ただし、英語で議論したときと同じように、□ = ”e”, ”s”, “t” とすると前項と整合しない。

 

頻出単語リスト

    • 冠詞: du, de, le, la, un, les, des, une
    • 前置詞: à, en, de, par, sur, avec, dans, pour など
    • 人称代名詞: il, je, la, le, me, te, tu, eux, ils, les, lui, moi, toi, elle, leur, nous, vous, elles など
    • be動詞: es, est, etes, etre, sont, suis, sommes など
    • 助動詞: être, avoir など
    • 指示形容詞、指示代名詞: ce, ces, cette, celui など
    • 接続詞: et, or, ou, car, donc, mais など
    • 疑問詞: où, qui, que, dont, quoi, lequel
    • 否定: ne, pasなど

(英語と同じく、暗号文における2文字の単語の出現頻度がやや少ない気がする。)

 

まとめ

  • 特殊文字を含めると文字数が多い(特殊文字の表し方が複数あり、ややこしい)
  • 一文字の単語の候補: "a", “à”
  • 読む方向: 左から右
  • 語尾に再頻出の文字の候補:”e”, ”s”, “t”
  • 2文字の単語の出現頻度が少ない(?)





4.エスペラント語
  • ハオルシアの世界観との相性: ハオルシアの物語に特定の国の言語は出てこない。国は大陸単位で統一され、国連がそれらを取りまとめている。このことから、世界共通言語を目指して作られたエスペラント語は、ハオルシアの世界観と相性が良いと感じられる。あくまで直感なのだが、このような "必然性" を感じられる言語は有力な候補である。
  • 文字: 英語のアルファベットからq, w, x, yの4文字を抜き、ĉ, ĝ, ĥ, ĵ, ŝ, ŭの6文字を加えた計28文字。ごく少数の語にしか使われない ĥ を除けば、27文字で暗号の文字数と一致する。
  • 一文字の単語: エスペラント語の問題は「一文字の単語」がない(?)ことである。少なくとも筆者が探した限りでは、候補となりそうなものは見つからなかった。
  • 語尾のルールが以下のように統一されている。
    • 名詞: -o (複数形 -oj) → 目的格 -on, -ojn
    • 形容詞: -a (複数形 -aj)
    • 副詞: -e
    • 動詞:現在形 -as, 過去形 -is, 未来形 -os
    語尾の候補としては、”a”, ”e”, “i”, ”o”, ”n”, ”s”, "l", “j” など。パッと見た感じ、突出して頻度が多い文字はなさそうであった。

 

頻出単語リスト

    • 冠詞: la(定冠詞のみ)
    • 前置詞: al, ĉe, da, de, el, en, je, po, dum, kun, laŭ, per, por, pri, tra など
    • 人称代名詞: ĝi, li, mi, ni, si, ŝi, vi, ili, oni(対格は -n, 所有格は -a)
    • be動詞: esti, estas, estis, estos, estu, estus
    • 助動詞: povi, devi, rajti など
    • 指示詞: tio, tiu, ĉi tio, ĉi tiu など
    • 接続詞: aŭ, ĉu, ke, ol, se, ĉar, dum, ĝis, kaj, nekなど
    • 疑問詞: kio, kiu, kia, kies, kie, kiel, kial, kiam, kiom
    • その他: 否定文 ne~pas, 接尾辞 mal- で意味が反対になる

(英語、フランス語と同じく、暗号文における2文字の単語の出現頻度がやや少ない気がする。)

 

まとめ

  • ハオルシアの世界観と相性が良い
  • 文字の種類の数はほぼぴったり合う
  • 一文字の単語に当てはまるものがない(?)
  • 語尾に頻度の文字の候補を絞りにくい: ”a”, ”e”, “i”, ”o”, ”n”, ”s”, "l", “j” など
  • 2文字の単語の出現頻度が少ない(?)





5.サンスクリット語
  • 文字: デーヴァナーガリー文字のローマ字表記。
    • 母音13種類: a, ā, i, ī, u, ū, ṛ, ṝ, ḷ, e, ai, o, au
    • 子音35種類: k, kh, g, gh, ṅ, c, ch, j, jh, ñ, ṭ, ṭh, ḍ, ḍh, ṇ, t, th, d, dh, n, p, ph, b, bh, m, y, r, l, v, ś, ṣ, s, h, ḥ, ṃ
    • 文字としては以下の36文字。結構多い。
      a, ā, i, ī, u, ū, ṛ, ṝ, ḷ, e, o, k, g, ṅ, c, j, ñ, ṭ, ḍ, ṇ, t, d, n, p, b, m, y, r, l, v, ś, ṣ, s, h, ḥ, ṃ
  • 一文字の単語: エスペラント語と同じく、ローマ字表記で一文字の単語を見つけることはできなかった。
  • 頻出文字: 文字の中では “a” の出現率がダントツで高い。次いで “ā” も良く出現する。出現頻度(図1)を参考にすると、□ = “a”, ♪ = “ā” となる。
  • 名詞:3つの性、3つの数、8つの格がある。全てをリストアップすると膨大になるので、ここでは雰囲気をつかむため一部のみ示しておく。
    • 第一人称の人称代名詞(単数): aham, mām (mā), mayā, mahyam (me), mat, mama (me), mayi
    • 第二人称の人称代名詞(単数): tvam, tvām (tvā), tvayā, tubhyam (te), tvat, tava (te), tvayi
    • 指示代名詞「tad:それ、これ」(男性・単数): saḥ, tam, tena, tasmai, tasmāt, tasya, tasmin
    • 関係代名詞「yad-:”who”, “which”」(男性・単数):yaḥ, yam, yena, yasmai, yasmāt, yasya, yasmin
  • 動詞: 文中では「接頭辞+語幹+人称語尾」の形で現れる。
  • 語尾の文字: 子音が語尾にくることが多く、突出して頻度が多い文字はなさそうである。
  • (以下、ハオルシア本編のネタバレを含むので反転)
    古代語が使われる意味: ハオルシアでは、物語の最後に「主人公たちが去っていった星は、シアノバクテリアが生まれる前の地球だった」ということが明かされる。SFだと思っていた物語の舞台は、実は太古の地球だったのである。そのことを思えば、"古代語" が暗号として採用されることに意味を見出すことができる(実際の舞台はサンスクリット語が登場するずっとずっと前ではあるのだが。)

 

まとめ

  • アルファベットの数が多い(ローマ字表記で最低36文字)
  • 再頻出の母音の候補: ”a”, “ā”
  • 一文字の単語に当てはまるものがない(?)
  • ハオルシアの世界観と相性が良いかも(?)





以上、5言語について検証してみた。所感としては、ぴったり当てはまる言語は、今のところなさそうであった。特に “□” の制約が厳しく、以下の3つの条件を全て満たす言語は今のところなさそうである。

  1. □が一文字の単語として存在
  2. □の出現頻度が最も多い
  3. 単語の右端に□が出現する頻度が最も多い(逆に、左側に出現する頻度は少ない)

無理やり解釈する方法として、「□は句点・イニシャルを表す」「□はダミーである」「一文字の□を隣の単語とつなげる」などの手はあるが、それらを検討するのは最終手段に取っておきたい。次は、もう少し他の言語にも可能性を広げてみることにする。







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ユートピアの暗号に挑む1

ハオルシアの6曲目に『ユートピア』という曲がある。
音源の歌(キコニアゲーム本編の「ユートピア」と同じもの)は何を言っているのかさっぱり分からない。歌詞カードはさらに暗号めいたものになっている。CD発売から3年以上経った現在も、この暗号を解いた者はいないようである。[1]

面白い。なんだかワクワクする。

ということで、今回は、ユートピアの暗号に挑戦していきたいと思う。一発で答えを出せるなんて微塵も思っていない。色々と寄り道をしながら試行錯誤していく過程を記録として残していけたらと思う。では早速始めよう。



(1)そもそもこれは暗号なのか?

大前提として、これは暗号なのだろうか? 意味のない文字列の可能性だってある。もしそうだとしたら、これからやろうとしていること全てが徒労に終わる。ここで以下の仮説を立て、前提としておく。

ユートピア歌詞カードに書かれているものは “暗号” である】・・・前提A

根拠としては、いかにも「挑戦状」っぽい凝った演出だ。ハオルシアは音源がCDケースに入っており、CDを取り外したときにTrack6, 8の歌詞とCredit-Instrumentalが現れるようになっている。CDを取り出すとど真ん中に現れる謎の文字列。「さあこれを解いてみろ」と言わんばかりである。この少年心をくすぐられる演出は、明らかに製作者からの挑戦状だ、と筆者はとらえた。[2]



(2)この暗号は解けるのか?

暗号は解けるように作られているのか? 挑戦する者に対してフェアなゲームになっているのだろうか? これも次のように仮定しておく。

【暗号は、解けるように作られている】・・・前提B

暗号は、提示された情報を元に「解けるように作られている」はずだ。うみねこの碑文のように。つまり、我々もキコニア本編(Ep1)を考察するのとは、スタンスを変える必要がある。様々な可能性が発散するのでなく、解は一つに “収束” する。適切な手順を踏めば、誰もが必ず解けるはずなのだ。
前提A, Bは、当たり前のように見えて当たり前ではない。そして、これらを明文化しておくことは、今回のような「答えがあるのかないのか分からないゲーム」に取り組む上で、非常に重要である。「本当に答えはあるのだろうか?」と疑いながら取り組むと必ずモチベーションが続かなくなる。真実はさておき、取り組んでいる間は「絶対に答えはある」と出題者を “信頼” しなければならない。ということで、以降はこれらのことを前提に推理を進めていく。


(3)暗号をじっくり調べてみよう

まず、歌詞カードの暗号を手書きで写してみた。

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図1 暗号原文

ぱっと見、意味不明な文字の羅列にしか見えない。だが、良く見ると、アルファベットのようなものが紛れている。アルファベットは、A, B, C, E, Mの5種類。B, C, Eは左右反転されている。[3]  それに、音符・シャープ・フラットなど、音楽記号のようなものもある。音楽記号も(対称的なもの除いて)左右反転されている。[3] それぞれの文字を色分けして表示した。

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図2 文字を色分けして表示

全部で23種類。( . や , も1つの記号としてカウントした。)アルファベットは26文字。十分近い。何らかの対応関係がある可能性がある。[4]

そして、注目すべきは “隙間” である。記号と記号の間に、明らかに隙間が開いている箇所がある。これらは単語の区切りを表しているように見える。単語ごとに色分けしてみた。(隙間の判別が難しいところもあり、間違って区切っている可能性もあるので注意)

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図3 単語を色分けして表示

良く見てみると、何度か「同じ単語」が現れていることが分かる。文字列が単語を表している可能性は高い。面白くなってきた。

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図4 複数回出てくる単語

ここまでの結果まとめる。

  • 記号は何らかの言語と対応しているようである
  • 隙間は単語の区切りを表しているように見える
  • 複数回出てくる単語がある





(4)言語は何か?

さて、何らかの言語と対応しているっぽいことが分かったが、問題は「何の言語か」ということである。一つの手がかりとして、ハオルシアに収録されている他の曲の情報をまとめてみる。

曲名 作詞 言語
望郷の虹 佐倉かなえ 日本語、英語
ピンクジャスティス 佐倉かなえ 日本語、エスペラント
ユートピア xaki, 本木咲黒 (Pomexgranate.) ???
シューニャの空 佐倉かなえ 日本語、英語、サンスクリット語、フランス語

ハオルシアのCDケースの帯にスタッフのコメントが掲載されており、その中に、佐倉かなえさんの「今回の歌詞は、4言語を散りばめてみました。全部わかりましたか?」というコメントがある。4言語とは、日本語に追加して、英語、エスペラント語、サンスクリット語、フランス語のことであろうと思われる。ユートピアについてもそのコメントが当てはまるという保証はないが、それらの4言語は有力な候補となるであろう。



(5)音源との対応

音源の歌との対応関係を調べてみる。まず、先入観を極力排除して、音節だけを耳コピしてみた。合っているか自信がないものは()に入れた。

u- me-t oda-(b)i-i- (d)a-ti-da (v)o-
(kr)u-ta ha-(v)e-ko-da-so-(n) e- mo-
tu- sa-i za-tyu- e-i so- (r)a-(v)i-da (v)e-
i-(n) di pe-(n)de- ko-(d)a- (r)e-s in pi-s

i-(z) no- fe-(v)a- (t)i- a- na-(u) sa-(i) wi-kya-(w)i-fo-
(w)a-(r)i-t fo- (r)a-(z)i- fo- a wo-(n) tu- (r)i-(s)o-
(f)o-(d)a- (r)a-na- (w)e-ta- ya-(r)a-(z) e-(w)i- (s)i-
ei (m)o-ni- pi-ti- (d)i-s ta- (w)o-(i) (r)a- (i)bi- (r)o-n mi- mi- a-

(t)u-se- (r)a-(w)i- (d)i-pa- di-pa-(u) (t)i-
jo-i(n) (p)i-s a-(n) na-ta- pi-s
i-(n)s te- tu- da- na-u a- (s)u- a-i (m)i- (s)i- (n)a-i so-(n)
a- (w)a-(m)o-(g)e- fo- (m)a-(i) sya-(u) ni-
(w)a-(m)o-(g)e- fo- (m)a-(i) (m)a-(u) wi-
i-(s)a-fe- i-(m)a-da-(tr)e- yu-pi-(e)

ここで気になるのは、音源と歌詞カードの文字数が合っていないように思えることだ。 歌詞カードの方は、全文字数を合わせて213文字。 対して、音源にの音節は全部で138、はっきりと聞き取れる子音の数は127。母音と子音に最低一文字ずつ使うとして、最低265字。二重母音や曖昧な子音を含めると290字を超える。単純なアルファベット表記では、歌詞カードの字数が明らかに足りない。

考えられる可能性は3つ。
(A)一文字に情報が圧縮されている言語(日本語など)を使用している
(B)歌詞カードに書いてあることは、音源の一部抜粋である
(C)音源と歌詞カードは全くの別物である
例えば、母音と子音がセットになった日本語(平仮名)であれば文字数不足の問題は解決する。ただし、音楽記号の種類が23種類しかないこと等を考えると、五十音との直接的な対応は考えにくい。今後、他の言語が見つかるかもしれないが、とりあえずは、(B)や(C)の可能性も視野に入れて、アルファベットとの対応を軸に考察を進めていく。



(6)暗号を読む方向

暗号を読む方向として以下の可能性がある。
(a)上から下 左から右
(b)上から下 右から左
(c)下から上 左から右
(d)下から上 右から左
(e)その他

ここでは、ひとまず「(b) 上から下 右から左」を採用することにする。理由は以下の2点。

  1. アルファベットや音楽記号が左右反転しているため。試しに、以下のように図を左右反転すると、全ての文字が正常になる。
  2. 「望郷の虹」の暗号の読み方と同じであるため。「望郷の虹」歌詞カードの英語のアルファベットを崩した暗号は左右反転してあり、右から左(上から下)に読むようになっている。これは「ユートピアの暗号も同じように読めば良い」というヒントが与えられている、と捉えられなくもない。

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図5 左右反転して表示

ただし、以上の2点は決定的な根拠としては乏しいため、他の可能性も捨て去ることはしない。



(7)文字の出現頻度

各記号の出現頻度を示す。

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図6 記号の出現頻度

こうして見ると、□と♪の出現頻度が圧倒的に多い事が分かる。次点で ♯ . 上が多い。 これらの出現頻度は何らかのヒントにならないだろうか? アルファベットの中で、どんな言語でも確実に出現頻度が多いといえるものがある。それは母音だ。子音に比べ、母音の出現頻度は必然的に高くなる。特に、□と♪は暫定的に母音だと考えて推測を進めていくことにする。また、各言語の出現頻度の高い子音なども調べてみると何かの役に立ちそうである。



(8)特徴的な文字列

暗号を眺めて気になったことを挙げておく。

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図7 特徴的な文字列
  • 長いフレーズの繰り返し: 暗号の最後に長いフレーズが2回繰り返されている。ここは最初の取っ掛かりとして取り組みやすそうである。
  • 独立した一文字: ◻︎が一文字だけ独立しているところがある。アルファベット一文字で単語として成立するということだろうか? ここも手掛かりになりそうである。
  • めり込んだフラット: 2箇所、♭が次の文字にめり込んでいるところがある。意味があるのかないのか、現時点では謎。
  • 段落の間に挿入された一文字: 一段落目と二段落目、二段落目と三段落目に、それぞれ♯、♭が一文字だけ挿入されている。これらの文字に何の意味があるのか、現時点では謎。


以上、暗号を手にして最初に考えたことをまとめてみた。次からは、いよいよ具体的な言語の考察に入って行こうと思う。当然、エスペラント語やサンスクリット語に関する知識は皆無である。せっかくだからこの機会に色々学んでみるのも悪くはない。回り道を楽しんでいこうではないか。



[1] 勿論、インターネットの海の中に見つからないだけで解いた人自体はいるかもしれない。
[2] ただ単に歌詞カードのページが足りなくなっただけという可能性もある。
[3] おかわりのƖ ıるきみたちへ ユートピア(鹿様): 上下反転である可能性に言及有 
[4] 他にも、韓国語(ハングル)の文字数も24文字、など可能性はある。ただしハングルの場合、組み合わせ方が指定されていなければならない。
[5] シューニャという単語がサンスクリット語で「空(くう)」を意味する。Signe (シーニュ) はフランス語で「記号、サイン」を意味する。シューニャ、シーニュと言葉遊びになっている。Significationも曲中の発音はフランス語のようである。





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Phase 1 ファーストプレイメモ

初見プレイ時(2019年12月頃)にとったメモを残しておく。全考察書き終えた今見直すと、根本の部分はさほど変わっていないが、要所要所で考えを変えた部分も多い。



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メモ:
ゲーム起動時の風のSE、うみねこと同じや! なんか懐かしい笑

平和主義から軍国主義へ、極端に動く大衆心理
面白い。実際にありそう
サイバーパンクガントレット、脳内検索、霊素、SF架空のテクノロジー
それを使う人たちの日常がリアルで凄い
物語に一気に引き込まれる
これが竜騎士節なんだよな

立ち絵の左右反転に違和感が有り過ぎるんだが。。
逆になぜこれでいけると思ったんだ?
もしかして何か意味があるのか?
右の時と左の時で別人格?? ンなわけ!

立ち絵反転が気になりすぎて話に集中できない。。笑

各組織の代表者、みんなキャラが立ってて良い
クロエ、なんとなくローズガンズデイズのクローディアを思い出す

三人の王たち。人類滅亡を目論む
微妙。。分かりやすい黒幕は好きじゃない……
大会のシーン最後に、「ジェストレスにメッセージを送信」
= 子どもたちの中に内通者がいる

大浴場打ち上げで打ち解ける子供たち
キズナアプリ開発者の話いいねえ。熱い!

ガラスの海
第三次世界大戦、誰が初めて、どのように終わったのか謎
ここに謎解き要素あるかも?

都雄の裏人格登場
おお、悪い顔。やばい急に面白くなってきた……!!
鈴姫とコーシュカの殺害を「預言」
内通者 = 都雄自身 か?
Phase 1 預言通りにバッドエンド → 以降のPhaseで時を遡って回避ルートを目指す(ひぐらしパターン)か?

都雄とミャオ
都雄の見た目、初見で性別分かりにくかったのはこのためか
ミャオが裏人格の正体? それとも第三の人格?
会話はできるけどプライバシーも保護できる多重人格設定、うみねこと通じるものがあっていいねぇ。都雄とミャオがコロコロと入れ替わるシーン。もしかすると紗音もこんな感じだったのかな
そういえば、高野三四 (34)、安田沙代 (34)ときて、順当にいくと「都雄 (34)」が真の黒幕説……
いやさすがにミスリードやな、これは。。

フィーア: 入江京介+高野三四じゃん(見た目)笑

二度目の都雄裏人格
地獄を防ぐためには「あやつ」を殺せ

「あやつ」とは誰か?
・三人の王: 仮面の下に既知の人物がいる?
・都雄自身: 主人公が死ぬことはまずない。除外
・その他の誰か

最終章で黒幕倒してハッピーエンドは面白くない。。
けど、その可能性も有り得るなあ。。

ミャオとジェイデンのデート
ジェイデン、雰囲気が戦人っぽいな
性別についての話
「今はもう子どもはキコニアが運んでくる時代ではない」←???
クリスマスに性別を言う。新手の死亡フラグか?
性別予想: 男・本名が都雄なので。女ならそんな名前つけないだろう、普通
→ いや、やはり、女に変更。身体的特徴が完全に女。都雄と名付けられたのはガントレットナイトに育てるかとを意識して親が付けた名前か。「リボンの騎士」のサファイア的な感じじゃないか

P3についての説明
都雄が飛び抜けて優れたP3を持っているのは、脳内に「プログラム」が導入されているから? 裏人格が「プログラム」がどうの言っていたような。関係ないか?

ギュンビルドの元人格
同期のマヤは軍人の愛人に。。
本筋からは逸れるけど、ここからマヤの内面に踏み込んだ章あれば熱い。不遇なところがなんとなく楼座の過去話を思い起こさせる

都雄と藤治郎の対話
藤治郎が父親だったか、予測できんかった
息子に戦争を止めてみろと言いつつ、自分は戦争を仕掛ける側の父
ただ、藤治郎は悪人ではないな。何か事情がありそう。中枢部に入り込むためにやむなく暗躍している感じか

不殺の誓いを立てる都雄たち
中に内通者がいたらそんな誓い呆気なく崩れると思うが……

実戦での活躍

セシャト
グレーの騎士の裏切り
19940305を持ち出した

記憶の改造
「人間の記憶を改造するのは非常に高度な技術」
……ここまで科学技術進歩してれば簡単にできるのでは?笑

再び裏人格
正体は、都雄の人格を追い出すためのプログラム
都雄自身もプログラム
本人は、顔面半壊で(「完全なる検死」懐かしい笑)過去に死亡
父が作り出したプログラムなのか?
都雄自身はそんなことあり得ないと主張
哲学的ゾンビ。AIが発達している設定ならあり得なくはないか
ある人物の顔写真を見ると自動的にスイッチが入る

人肉加工処理施設の記憶
吊るされる人々。GAN●Zになんかこんなシーンあったな笑
この惨劇を止めるためには「あやつを殺せ」
→ 裏人格は本当に黒幕なのか? なぜわざわざヒントを与えてくれる? ベルンカステル的な立ち位置かも。全てを知っていて、冷酷を装いながら惨劇を止めようとしている実はいい奴説

藤治郎の騎士団の話
ジェストレスの素顔が、明らかになる。
誰だろう? 一番近いのは、都雄の顔に思えるが……?
都雄と姉妹とか?

内通者: AOUの6人の中に絞られる
予想してみるか。
ミャオはどうだ?都雄本人だから監視も容易。
もしくはクロエ。ジェストレスと姉妹とか。

破滅の時計
12時が太陽弾頭?
13時まであるのはなぜ?

動画サイト理論
で、出た、トンデモ論法……
「非の打ち所のない素晴らしい動画・非難されるべき動画」って、それ自体主観が入ってるからな笑
価値観が違うだけでしかない
マジョリティの嫌悪・架空のマイノリティの話自体は面白い



都雄の騎士団が『お花畑』に思えるのはなぜだ?

理由1: 具体的な取り決めがない
結局、それぞれの主観によって価値観は異なる。「それぞれの判断に任せる」というのは「何も決めていない」のと同じ

理由2: 想定が甘い。ちゃんとリスクを考えてない
もっとシビアな状況を想定すべき
・例えば、自分の仲間が殺されたら?
・相手を殺さないと自分が死ぬ状況下では?
・もし誰かが裏切ったら?
自分にとって大切なもの・守らなければいけないものが危機にあるとき・失われたとき、そのような状況でもこの騎士団で決めたことを優先させることができるのか?
そういうケースを一つ一つ潰していかないと

結局ノリと勢いだけでゴリ押すいつものパターンじゃねーか!

この主人公サイドの「お花畑感」がどうも気に入らない
主人公から心が離れてしまう
悲劇が起こっても「だって、それを防ぐ最善手を取ってないじゃん…」と感じてしまう
頼むからもうちょっと考えてくれ。。共感させてくれ。。


やはり、現状で都雄たちにとっての最善手は、「一斉にクーデターを起こすこと」なんじゃないか?
ガントレット全員が一斉に集結して、全世界に戦線布告する。
人類共通の敵ができたら、世界は団結せざるを得なくなるだろう。
例え一瞬だとしても、都雄達にはそれが出来る力がある。
駒に甘んじるな。本当に世界を守りたいならば、今すぐ全てを捨てて、世界に戦線布告するんだ


「問題の先送り」は正解か?
これも面白い論点やな。国が動けなくなるのは国民感情があるから
当事者だけの一存で決めることができるなら解決する問題も多いのだろうが

過激派平和主義者の登場。そのせいで戦争反対と言えなくなる市民たち
「藤治郎のデコイ理論」これは面白い
大衆心理とそれを利用する人たちを上手く描いている



ナイマ「付いて来い!! 私が死にも殺しもしない戦い方を見せてやるッ!!!」
一回言ってみたいセリフやなーこれ


国民感情を煽るためのプロパガンダ
情報操作
目には目を、死には死を!


人肉工場は、水槽の中の脳を製造する工場だったか。

リンジーの祖父の死
カメラを構える藤治郎
富竹フラッシュ?
まさか、御岳って、富竹か!?
ていうか御岳藤治郎って、富竹次郎やん!!
あああああ!! フィーア(4) ドライ(3)ツィッヒ、
やはり彼女が高野三四・安田紗代ポジション。見た目的にも、入江京介+高野三四やからな笑
都雄(34)かとも思ったけど、こっちはミスリードかな

0時になった。『黄金郷』の時間やー!!!

地下の科学者たち
新発見したマリオを讃える科学者
子どものような目の輝き = 狂気
このシーンはちょっと微妙。フィーアも司会なんかやるんじゃない

科学者の本当の恐ろしさは無邪気さにあるのではない
目的を達成するための冷徹さの中にあるのだよ



世界規模の地震
8MSの崩壊
元々地球は廃墟であり、8MSがたまたま延命していたに過ぎない
・気候変動、自然災害
・食糧難
バイオハザード
・霊素による汚染
一気に人類滅亡が加速する

世界が停戦を決定 12/25
直前に駆け込み需要で争いが起こる
悠長に期限を設けるからそんなことになるのでは? 「明日から停戦」ってことにすれば良かったのでは?
ただ、どうせ停戦協定しても、諸問題解決できないとすぐにまた紛争は起こる。一時凌ぎにしかならない

リーテバイルの兄の死
8MSの名誉職
国際的陰謀の告発をしようとしていた

都雄の脳内
「母親」に報告
母親とは誰か? 黒幕フィーアだとしか思えないのだが(名前のせいで笑)

世界中で無人兵器の暴走
35億人 (人口の1/3) が死亡

藤治郎
「今はまだ何も起こってないに等しい。
チェスの相手が席に付いたところ」
チェスの相手は?→ やっぱりフィーアか?

宇宙開発
オブジェクト
19940305
1994年3月5日?
水質汚染で人類の危機が加速

やはり裏人格は悪人ではなさそう。事前に忠告してくれている
都雄がいなければ、全ての問題は解決する
→ 可能性挙げるとすれば、都雄がいることが黒幕 (例えばフィーア) たちに影響を与えている。いなくなれば間接的に、問題解決に寄与できるという論法
それか、都雄自身が最後にめちゃくちゃやらかす。藤治郎が「まだ始まってすらない」と言ったのはそういうこと

「まだあなたの出番じゃない、おやすみなさい」
やっぱり単純に考えるとフィーアが黒
フィーアが都雄を作った?

クリスマス当日、ミャオ怪しすぎる。こいつ黒幕か??

ドローン騒ぎ
正規のパスワードで正規の命令を受理して正規の手順で処理

殺し合うガントレットたち。地獄のクリスマスパーティ。ミャオますます怪しい

第九最上騎士団からメッセージ

ギュンヒルド。シールドが出ない。死亡
リリャを殺すクロエ。これは? 内通者はクロエだったのか? なんかミスリードな気がする

鈴姫と戦闘
藤治郎「まだお前が死ぬ時ではない」ガントレットを乗っ取り鈴姫を殺害
なんか違和感あるな。藤治郎が介入しなければ、預言通りにならなかったってことか?

コーシュカ。反乱・理想を手に入れた
あれ? コーシュカは預言どおりにはならなかったぞ。なんなんだこれは?

ジェストレス、セシャトを目の敵にして追う
藤次郎とフィーア、ミロのビーナス
お母さん「私は悪いお母さんよ」
ジェイデン・電脳世界?

怒涛の展開面白えええええええええ!!! 「なく頃に」が帰ってきたって感じする!!!!
そしてフラグメント開示!! これはテンション上がる笑

フラグメントは一転してほのぼの。良い


クロエ、なんだこの娘は笑 ここにきて高感度爆上がりなんだがww


ギュンヒル
マヤの過去の記録を調べる
人体実験により死亡。復讐を誓う
シールドが出なくなったシーン再び

黒幕??でも、ギュンヒルドのシールドが出なかったのはなぜ??

藤次郎とセシャトの敵。2000年前に預言された人類の滅亡。チェス盤にようやく着いたところ。預言の命中80%
うーん、まったく分からん




プレイ直後の感想:

うみねこを思い起こす要素が満載で、うみねこオタクとしては最高に嬉しかった笑

世界観の作り方が上手い。
平和主義で軍事バランス崩れて、第三次世界大戦起きて、真実は隠蔽され、その後再び軍国主義に偏っていく…という嘘みたいな話に妙に説得力がある。
大衆心理の扱い方を良く心得ている。さすが。

ガントレットをはじめとする架空のSFテクノロジーも、世界観に良く馴染んでいる。
それを当たり前のように使って生きている人たちの描写がとても上手い。
物語りを作る過程でどんなことがありそうかブレストしたり、試しにキャラを動かしてみたりしてるんかなー。
その想像力分けて欲しい笑

キャラ同士の掛け合いも上手い。内面にスッと入る描写。
ジェイデンとミャオの掛け合いとか良くああやって膨らませることができるよなぁ。
ケッテのチーム内で、サポート役の友達がフォローに入るところとかもすごく良い。キャラ一人一人がちゃんと「生きている」

こんなに「謎」が提示されると思ってなかったから、予想外で嬉しかった。ネットで考察漁るの楽しみ。

現時点の謎:
1. ガントレットナイトの内通者は誰か?
2. 都雄が殺さなければいけない一人とは?
3. 都雄の母親は誰か?
4. 素性が不明な人たち: 覆面の3人、セシャト、ジェストレスの正体は?
5. フィーアは何者?
6. 藤治郎とセシャトの「敵」とは?
7. 人肉工場施設は何だったのか?
8. 都雄は本当にプログラムなのか?
9. 都雄が事故で頭部半壊で死んだとか言っていたのは何?
10. 最後にコーシュカ、ジェイデンが仄めかした「仮想世界」とは?
11. 都雄の性別当てる




プレイ直後の考察:

人間の未来、最終的には、脳と脊髄だけ取り出して (人肉加工施設)、VRの世界に生きるようになる (仮想世界)。
それが、昔から「預言」されていた「人類の滅亡」である。
人としての尊厳が失われるという意味で、人類は「滅亡」していると言える。
そうせざるを得ないような状況下に陥ることが、預言されているのである。
例えば、全ての人間が平和の内に増え続けると土地の面積・食糧・エネルギーなど限られた資源が行き届かなくなる。
そんな中、VRの技術が進むと、苦肉の索として、「水槽の中の脳」として全人類をVRの世界に移そうということを考えるのだ。
これは避けられない運命である、と古の書物には記されているのだ。

「そんな世界にしてたまるか!」と考えた人たち (藤治郎やセシャト、ジェストレス(= 都雄の姉説)、3人の王たち)
何が問題なのか?
「平和であること」が問題なのだ。
人類は適度に数を減らさないといけない。そのために戦争は必要悪なのだ。こうして、世界大戦を仕組む計画が実行された。

一方で、地下の世界では、科学技術の発展を推し進めているクレイジーな研究者たちがいる。
彼らの研究を止めること。これこそが人類の滅亡を止める唯一の方法なのだ…!!


・・・
な〜んてね。
実はね。
もう遅いんだよ。

実は、もう君は「水槽の中の脳」なんだよ。

人肉工場の記憶、あったでしょ?
そう、あれが現実。

おかしいと思わなかった?
脳内でプログラムが現れたり、会話がバグったり、自分の身体なのに他人に操作されたり。

それはね、君がもうすでに、VRの中で生きている。という証拠なんだ。

君の肉体は死んだんだよ。あの日事故で。
頭部半壊になって。

君の母親 (フィーア) は自分の命と引き換えに、君を助けたんだ。
そして、君の脳は、水槽の中で、君の人生はプログラムの中で生きている。

これはゲームなんだ。
君がそのことに気付くことができるかどうか。

プログラムは一定時間で終了する。
その期間までに、現実に、目覚めること。

君が殺さなければいけない「あやつ」とは、「君自身」のことなんだ。
君自身を殺せば、現実世界に戻ることができる。
でもそう簡単にはさせないよ。
刺客として別人格 (ミャオ) も送りこむからね。



都雄、聞いてるか?
もし、お前が目覚めることが出来たなら「人間は、例えVRの世界に送り込まれたとしても、自力で戻ってこれる」ということの証明になるんだ。
そのことがどれだけ重要か分かるか?
そう、人類が『預言』に打ち勝てるかどうかのテストケース。
それがお前なんだ・・・・・・!!!



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● 妄想で再解釈したキコニア世界 (Phase 1)

最後に、これまでの考察をまとめて、一つの物語にまとめる。
これは、Phase 1 の謎に対する現時点での筆者のなりの回答である。

最初の記事で断った通り、正答率はさほど重視していない。
「こうだったら面白いかも」という可能性の提示に過ぎない。
皆様の考察・妄想のきっかけの一助となれば幸いである。


では始めよう。「妄想により再解釈したキコニア世界」の物語を。






「神のシナリオ」が完了して1000年が経過した世界。全人類の脳は、月面上で一つに繋がれ、巨大なコンピュータを形成していた。脳スパコンの一部となった、藤治郎の脳は、過去の真相を突き止め、「神のシナリオ」を回避するルートを探索するために、A3Wを再現した仮想世界を生み出した。藤治郎の脳は『母』となり、自分の駒として『都雄』にプログラムを埋め込んだ。真相がわかった時に、『都雄』のプログラムを発動させ、自分たち脳スパコンごと全てを破壊させるために。

〜ここから、仮想世界内の話(Phase 1)〜

仮想世界で、都雄は女の子として生まれ、男として育てられる。親友ジェイデンとの友情・恋愛で揺れ動く心から、架空の人格「ミャオ」を作ったりしながらも、正義感の強い真っ直ぐな若者に育っていく。ところが、仮想空間のバグとして生まれた青都雄が、都雄に現実世界の話を持ち出して「預言」をする。突然の出来事に都雄は混乱する。仮想空間のプログラムを運営するケロポヨは、青都雄の存在に気付き、プログラム管理者である『母』に報告する。

一方、世界では、神のシナリオ「推進派」と「阻止派」の戦いが始まっていた。神のシナリオ「推進派」は、第三次世界大戦の国際的な陰謀で人民を拉致し、月面上に脳スパコンの建設を始めていた。対する、神のシナリオ「阻止派」の藤治郎・セシャト・3人の王たちは、世界のどこかに存在する推進派を見つけるために奔走していた。貧民街で育ち、一般人に対して強い復讐心を持つようになったギュンヒルドは、不断の努力で軍の高官の地位を得て、「人口を減らし、文明をリセットする」という理念を持つ、3人の王の役職を継承した。
藤治郎は、ジェストレスとして3人の王に仕え、その人脈と権力を上手く利用して、世界情勢を裏からコントロールしていた。また、停戦協定を結ぶ会場では自らテロを起こし、第四次世界大戦を誘発するためのを工作を行った。彼ら「阻止派」の狙いは、神のシナリオの原典である「聖イオアンニスの黙示録」に書いてある通りの災害を起こすことで、対戦相手である神のシナリオ「推進派」の動向を炙り出すことである。
目論見通り、「推進派」は動き出した。地下研究所が、環境型8MSの動作を停止させ、地球は大混乱に陥った。藤治郎・セシャトは、地下研究所の在り処を探しているが、簡単には見つからない。地下研究所は、科学者たちが人工的に作った仮想空間内にあるためである。神のシナリオに魅了された聖櫃騎士団の科学者たちは自分たちの脳を連結して計算機を作り、地下研究所という仮想空間を生み出した。彼らは、データ通信を介して、地球上の8MSに影響を与え、災害を引き起こしていた。

世界各国の一般人は、神のシナリオ「推進派」と「阻止派」の戦いに巻き込まれ、戦争・環境破壊・食糧危機など、次々と襲い掛かる災害に苛まれる。結束を固めようとする世界のガントレットナイトの若者たちも、裏で渦巻く陰謀によって、内側から切り崩される。知らず知らずの内にスパイ人格をインストールされ、内通者となり、黒幕に情報を提供していたのである。都雄が、結成した騎士団の窓口として信頼していた、クロエ・鈴姬・スタニスワフ・リーテバイルの4人が内通者にされていた。リーテバイルのスパイ人格は、主人格の気付かぬ内に、「霊素の原料は人間だ」と世界に告発しようとしていた兄シリルの暗殺を行った。クロエのスパイ人格は、戦闘中のリリャに電撃を流し殺害しようとした。しかし、リリャは「粘土の少女」の能力により死亡することはなかった。
鈴姬は、藤治郎によって暗殺された祖父の敵を討つため、地下研究所と協力し、金色のガントレットを入手した。鈴姬と都雄は肉弾戦を繰り広げたが、藤治郎の介入により都雄のプログラムが動作し、鈴姬は死亡した。ギュンヒルドも3人の王としての役目を終えたため、藤治郎により消される。現実世界で都雄に殺されるはずだったコーシュカは、Phase 1 では違うルートを辿った。「パンドラの箱」の能力覚醒により、肉体と精神を切り離し、仮想空間への移住を成功させたのだ。
藤治郎は、仮想空間の中で黒幕を見つけかけたが、追い詰めることはできなかった。その後、最終的に「神のシナリオ」の阻止はできず、都雄・ジェイデン含む全人類は、脳を抜き取られ、仮想空間の住人となった。こうして、Phase 1 では、『母』である藤治郎の脳の求めた結果は得られなかった。

仮想世界は一度全てリセットされ、さらに悠久の時が流れる。
そして、次こそはという望みをかけ、再び、A3Wの仮想空間が生み出されるのであった……(Phase 2 へ続く)









一問一答 100問



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● 「パンドラの箱」と「粘土の少女」

この記事では、リリャとコーシュカの能力について考えてみる。[1]


コーシュカの「パンドラの箱」: ガントレットナイト複製能力説

パンドラの箱(SS)>
研究所が付けた彼女の脳のコードネームらしい。その中にはあらゆる災いが詰まり、その奥底には希望が眠ると言われているが……。(キャラクターTIPSより)


コーシュカの「パンドラの箱」と呼ばれる能力。
ギローイ重4度軍事研究所(以下、ギローイ研究所と略称)が最も期待をよせている能力だ。ヒントになることとして、まず人体実験中の医師たちの会話を取り上げる。[2]

「被検体040から048、NULLのままです」
「049、受信を確認。048までは実験終了、廃棄」
1人の少女を残し、灯りが消えてその姿は闇に消える。
残る1人の少女は、コーシュカから脳内の何らかを写し撮ろうとされているようだった。しかし、芳しい様子はない。

「受信」という言葉、「脳内の何らかを写し撮る」というキーワードが出てくる。

また、ギュンヒルドとギローイ研究所職員の会話で次のようなものがある。[3]

ギュン「パンドラの複製作りは出来そうなのですか」
随行員「今のところ全く。あれは奇跡中の奇跡」
ギュン「複製が作れない限り、パンドラにはこれ以上の非人道的な実験は出来ないということ。彼女にとっては朗報でしょう」

会話の中に、パンドラの複製」と言う言葉が出てくる。
これらのキーワードを文字通りに受け取ると、ギローイ研究所では『コーシュカの能力を他の人間に複製しようとしている』ようである。


コーシュカの能力とはなんだろうか?
まず、一つ目の説として、研究所で行なっている実験そのものが、コーシュカの能力を指す、という可能性を考える。パンドラの箱」とは、「ガントレットナイトの戦闘能力を複製する能力」である、という考えである。もし、AOUガントレットナイトのエースであるコーシュカの戦闘能力をコピーできたなら、どうなるだろうか?

子どもたちが工場で大量生産できる時代だ。
軍は、工場で大量のガントレットナイトの生産をすることが可能になる。
ガントレットナイトの数で国の軍事力が決まるA3Wにおいて、これは軍にとっては、夢のような技術だろう。
また、被験者となる子どもたちは、能力が足りなかった訓練生であり、この実験に最後の希望をかけて、実験に同意したらしい。コーシュカの戦闘能力をコピーする、という内容は、被験者の希望とも合致する。



コーシュカの「パンドラの箱」: 電脳世界へのアクセス説

もう一つの説は、コーシュカの能力は、上記以外の何らかの能力であり、その能力を他の人間に移す技術を確立するために研究がされている、というものだ。

ギュンヒルドと随行員の会話で、次のような会話がされている。[3]

ギュン「パンドラの箱。人類に最後に残された希望、か」
随行員「すでに死んでいる星です。人類に残された時間はあまり多くはありません。彼女の秘密を解き明かさない限り、人類と文明を残すことは出来ません」
ギュン「パンドラ自身は知っているのですか。自分だけが新世界へ行くことの許された特別な存在だとは」
随行員「いいえ。当人には、貴重な脳構造なので研究しなければならないとしか伝えていない。おそらく死刑免責と引き換えの研究協力としか思っていないでしょう」

「人類に残された最後の希望」「人類と文明を残す」「新世界へ行く」という言葉が出てくる。
これらのキーワードを考慮すると、単にガントレットナイトの軍事利用の話だけしているとは考えにくい。それ以外の何かがあるのかもしれない。
特に、「新世界へ行く」という言葉が気になる。これは、仮想空間への移住 (神のシナリオ) のことを表しているようにも思える。[4]

また、コーシュカの終盤のセリフも気になる。[5]

都雄「駄目なのか!!駒の俺たちがどうあがいたって、チェス版の外から命令するやつには逆らえねぇのか!!」
コーシュカ「いいや、逆らえる。この肉で出来た身体なんか捨ててやるという勇気さえ持てるなら。大人たちに一矢報いてやることが出来るんだ。オラはこの世界をぶっ壊す」

そして、最後のセリフ。[6]

コーシュカ「やった。やっと、このクソみたいな、大嫌いだった身体を、捨てられる。新しい身体、新しい世界、新しい自分を、始められる
おびただしい血の海と、散らばった肉片で染め上げられた、浮上の絨毯の上で、コーシュカは自分の身体を抱きしめながら喜びに打ち震える。
大勢の対ガントレット装備の武装警察隊が包囲して銃口を向ける中、コーシュカはただただ、喜びをかみ締めている。

このように、コーシュカは『身体を捨てて新しい世界へ行く』というような趣旨の発言をしているが、これも「神のシナリオ」のことを言っているように思える。これらのことから、コーシュカの能力は、「神のシナリオ」と関係しているようにも考えられる。

通常の人間でも、セルコンを使えば、仮想空間を作ったり、そこに出入りしたりすることはできる。だが、肉体が死亡すれば、仮想空間上の精神も当然消滅する。

パンドラの箱」とは、肉体と精神を切り離し、肉体が朽ちても精神を仮想空間上に留めておくような能力なのではないだろうか。

もしそのような能力を全人類にコピーすることができたならば、脳抜き工場で脳髄を抜き取ることなく、全人類を仮想空間へ移住させることができるかもしれない。「人類に残された最後の希望」というのも納得がいく。



リリャの「粘土の少女」: 再生能力説

<粘土の少女(SS)>
研究所が付けた彼女の脳のコードネームらしい。神は粘土から人間を生み出したと言われているが……。(キャラクターTIPSより)


リリャの能力に関しては、情報が少ないため、足りない部分は想像で補うしかない。「粘土の少女」という言葉から、連想されるもの。それは、変形・変身・柔軟性などだろうか。

一つ気になることとして、アムル川でグレイブモウルと白豹が対戦しているときの、クロエとリリャの会話を取り上げる。[7](一部抜粋)

クロエ「私にも、わかりません。リリャ。あなたは本当は、誰なんですか?
リリャ「リリャだよ。リリャ・ヴィリヤカイネン。銃殺刑と引き換えにギローイの機材になって、心も魂も売り渡した、リリャ・ヴィリヤカイネンだよッ」

クロエがリリャに投げかけた質問は、明らかに異常である。
クロエはリリャの存在に対して、不可解な何かを感じて、そう尋ねたように見える。また、リリャのそれに対する「ギローイの機材になって、心も魂も売り渡したリリャ・ヴィリヤカイネンだよ」という返事は、クロエの疑問はリリャが受けている人体実験によるものだと暗に回答しているようにも思える。

また、Frag. 15のギュンヒルドと随行員の会話で次のようなものがある。[8](一部抜粋)

ギュンヒルド「(リリャに対して)彼女は?
随行員「彼女も死刑免責の研究協力者です。パンドラの複製が取れるまでは、我が研究所の最大の成功作品。
パンドラが洗われなかったなら彼女こそが我が研究所の目指すべき羅針盤でさえあった
ギュンヒルド「………………」

このフラグメントは時系列的には、少なくとも第8章以降だと考えられ、ギュンヒルドがリリャと初対面であるということはあり得ない。[9]
「彼女は?」と尋ねるということは、ギュンヒルドも(先ほどのクロエの例と同じく)リリャの存在に対して何らかの疑念を抱いたように思われる。また、それに対する随行員の回答も、やはりリリャの人体実験を示唆するものであり、ギュンヒルドは何かを察したのか、沈黙している。

ここでは、次のように解釈する。

  • クロエ・ギュンヒルドは、リリャの「粘土の少女」の能力の詳細を知らなかった
  • リリャに関して、不可解な現象が起きたため、クロエ・ギュンヒルドは困惑し、あのような発言をした
  • それに対して、リリャの能力について含みを持たせたような回答が返ってきた

不可解な現象とは、何だろうか? ここから先は推測するしかない。
分かりやすい例でいうと「死亡したはずのリリャが生きている」などだろう。

例えばの話だが、第17章でのグレイブモウルと白豹のアムル川での戦いは、ちょっと不穏な終わり方だった。[10] もしかすると、リリャはあの戦いで致命傷を負っていたのでは? クロエはそれを目撃し、ギュンヒルドは少将としてその情報を受け取ったのでは?
死亡したはずの、リリャが目の前でピンピンしている。
もしそのようなことが目の前で起これば、当然困惑するだろう。

リリャの能力として、「どんな物理的ダメージを受けても、粘土のように何度でも再生できる能力」というものを挙げてみる。コーシュカの能力が見つかるまでは、ギローイ研究所では最も期待されていたという。軍としては、一応、重宝はするだろう。



以上、暫定的に仮説を立ててみたが、何分情報が足りないため、現時点では、はっきりしたことは言えない。Phase 2以降、より多くの情報が提示されるのを待ちたい。



[1]コーシュカとリリャの能力考察ブログ参考:
おかわりのƖ ıるきみたちへ リリャのシナモンロール(鹿様)
おかわりのƖ ıるきみたちへ パンドラ(鹿様)
[2] 第8章 第3の適性: コーシュカの人体実験
[3] Frag.15 グスタフソン員数外少将: ギュンヒルドと随行員の会話
[4] もしそうだとすると、ギュンヒルドは「神のシナリオ」のことを知っていることになる。ただし、その場合、どこまで知っているかは議論の余地がある。表面的な理解にとどまり、その真実は知らない可能性もある。セキュリティクリアランスSS-のギュンヒルドにどこまで情報が開示されるかが鍵となるだろう。
[5] 第25章 預言の刻: コーシュカと都雄の会話
[6] 第25章 預言の刻: エンディング後の一カット
[7] 第24章 天災のお子様ランチ: クロエとリリャの会話
[8] Frag.15 グスタフソン員数外少将: リリャを見たギュンヒルドと随行員の会話
[9] Frag.15での「パンドラの箱」の実験の被験者番号は090~099、一方、第8章では040~049
[10] 第17章 死ぬな、殺すな: 以下、戦闘中の描写からクロエたちにとっては想定外のことが起きたことが分かる。
 クロエ「もう会敵してもおかしくないのに、姿が見えない」
 鈴姫「シールドを破られたら潔く退却を。それでは、お覚悟!」
 クロエ「えッ?!?!」


 



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● Phase 1 の世界構造について(後編)

前編では、Phase 1 が『仮想世界』である可能性を提示した。この記事では、さらに議論を進めて、仮想世界を生み出した存在『母』などについて考えていく。



『母』という存在は何なのか?

物語には、『お母さん』と自称する謎の存在(以降『母』と呼ぶ)が登場する。
その一つを以下に示す。(一部抜粋)[1]

お聴きなさい、私の可愛い都雄。
あなたの最高優先度目的は、この<地獄>を、如何なる手段を以ってしても、未然に防ぐこと。それを遂行できる唯一の方法は、あやつを、殺すことのみ。あやつを見つけ出して、絶対に殺しなさい。
それだけが、あの<地獄>を、回避する唯一の方法。

内容としては、「あやつを殺す」ことで地獄を「回避」できる、というものだ。青都雄の主張と整合性がある。(青都雄との違いは「都雄自身を殺すこと」が選択肢に入っていないことである。)

さらに、最終章では次のような語りがある。[2]

大丈夫。お眠りなさい。まだ目覚めなくていいの。
私はいいお母さんではないわ。自分の為に、世界の全てを費やす、悪い悪いお母さん。もし、お母さんの悲願が叶う機会が、あなたが生ある間に訪れることになったなら。その時は、お母さんのために力を貸してね。きっとそれをあなたは、僕をお母さんの目的だけの駒に使うなと、怒るでしょうね。
ごめんね、都雄。お母さんは、あなたを駒にする為に生むわ。その代わり。あなたに、やがて実用化される最強の武器、ガントレットを、生まれながらに世界の誰よりも使いこなせる力を与えるわ。あなたはきっと、その力を賞賛されて、幸せな人生を歩めるでしょう。人生の選択において、誰よりも自由に選択できる力を得るでしょう。お母さんがあなたを、駒として使う日が訪れない限り、ね。
願わくば。その日が来ないことを願っているわね。

この語りには多くの情報が詰め込まれている。

  • 『母』が都雄を生んだ
  • 『母』は、都雄に、ガントレットを使いこなせる力を与えた
  • 『母』は、『悲願』を持っている
  • その悲願が叶う機会が訪れたならば、『母』は都雄を『駒』として使うつもりである

 

これまでの情報と合わせて整理してみる。
母の『悲願』とは、『あやつを殺す』ことだろう。

都雄を『駒』として使うとは、青都雄の言う『殺人プログラム』と関係がありそうである。第13章、プログラムである証拠に次のようなシーンがある。[3]

青都雄「君がプログラムだという証拠を見せてあげるよ」
都雄「もったいぶるな。とっととしろ!」
青都雄「じゃあ、君の殺人プログラムのトリガーを引いてあげるよ。これを見てもらえるかな?」
都雄「何だよ。だからとっとと・・・」
・・・え・・・?

青都雄が何を見せたのか、その後、都雄はどうなったのか、肝心な情報が伏せられているため、あくまで推測するしかないが、どうやら都雄は「あるもの」を見ると「殺人プログラム」のトリガーが入るようである。
一つの可能性として、これは『母』が作ったプログラムであり、都雄は『あやつ』の姿を見たときにそのプログラムが発動するよう設定されている、と考えることができる。

この『母』という存在は何なのだろうか?
まず、都雄の物理的な母親とは限らない。
都雄を「産んだ」でなく「生んだ」と表現していることや、まるでゲームマスターのような語り口からすると、物理的な母親よりも、都雄というプログラムを作り出した上位世界の存在であると考えた方が良さそうである。

そして『母』の目的は、都雄を駒として使って、『あやつ』を殺し、<地獄>を回避すること、である。

この『母』は、前章で述べた、仮想空間を生み出している『何らかの存在』 にぴったり当てはまる。
『母』は、仮想世界のA3Wを作った大元となる存在なのではなかろうか。

都雄に特別なプログラムを仕込み、『駒』として扱うことで、仮想世界の中で「あやつ」を殺し、「神のシナリオ」を回避する何らかの方法を探っているのではないだろうか。




『母』・ケロポヨ・青都雄の関係

『母』とケロポヨは密接に関わっていそうである。都雄が「自分はプログラムなのか?」とケロポヨに尋ねた時、『母』の語り口調がケロポヨの声の中に混ざる。[4]

ケロケロ、ゲーロゲロゲロ。
都雄。ゲコゲコ。私の可愛い都雄。
大丈夫。お眠りなさい。ケロケロ、まだ目覚めないくていいの。まだ。
だから、ゆっくりゆっくりと。ゲコゲコ、おやすみなさい。


また、青都雄の存在を感知したケロポヨは以下のような反応をする。[5]

オイラは変なプログラムを見つけたと、奥様にご報告してくるぽよ。
あっ、オイラも奥様に報告するぽよ!
オイラも行く行く、オイラも行く!!
奥様ぁ奥様ぁ!!

ここに出てくる「奥様」とは、『母』のことだろうと考えられる。

青都雄をケロポヨが警戒していることから、『母』と青都雄は協力関係にはなさそうである。
『母』と青都雄は、「神のシナリオ」を阻止するという目的においては同じだが、そのために取る手法が次のように異なっている
・『母』: あやつを殺す
・青都雄: 都雄を消去する [6]

青都雄が都雄を消去すれば、『母』がA3Wの仮想世界を作った目的が失われ、世界そのものが消滅するのかもしれない。(よって必然的に惨劇は回避させる)
もしそうだとすると、青都雄は、仮想世界の中に偶発的に生まれた『プログラムの欠陥(バグ)』のような存在だと解釈することが可能である。
ケロポヨは、メタ的な意味で仮想世界のプログラムを運営しており、バグとしての青都雄を認識し、プログラムを管理する『母』に異常を報告した、と考えられる。



 

『あやつ』= 脳スパコン

青都雄や『母』が指摘した『あやつ』とは、一体誰(何)なのだろうか?

まず、青都雄「三人の王を。あやつを、殺すんだ」の発言 [7] より、「三人の王 = あやつ」と考えてみる。
青都雄や『母』によると、『あやつ』を殺せば「地獄を回避」できるという。
「三人の王」を殺せば、地獄を回避できるだろうか? そうは思いにくい。
「三人の王」は確かに第四次世界大戦の誘発などには関わっていそうだが、それ以外の様々な災害(8MSの停止等)は、三人の王とは無関係なところで起きており[8]、三人の王を殺したところで神のシナリオが止まるとは思えない。
よって、ここでは「三人の王 = あやつ」の可能性は除外する。

ここで発想を転換して、「神のシナリオを止めるには誰を殺す必要があるか?」を考えてみる。
『あやつ』が単数形であることから分かるように、その人物は一人である。神のシナリオを推進している真の黒幕がいたとして、その人物を殺せば万事解決するのだろうか。あれだけ多くの組織が動いていて、一人殺せば全計画が中止になるようなことがあるのだろうか?
もしかしたら黒幕のリーダー的な存在がいるのかもしれない [9] が、ここでは別の可能性を考えてみよう。

『あやつ』とは『脳スパコン』のことである。

過去の記事の脳スパコン仮説を前提にしている。仮想世界を生み出す脳の集合体(脳スパコン)を、一つの生命体とみなして、『あやつ』と表現しているのではないだろうか。 『あやつ』と呼ぶことで、人物を連想させるところがミスリードである、と考えるのである。

「あやつ= 脳スパコン」ならば、それを殺せば「神のシナリオ」が止まるというのは、十分理解できる。人類を移住させるためのハード本体が失われれば、計画は続行不可能になってもおかしくはない。また、青都雄が「殺し、壊す」プログラムだ、と言っていることにも注目したい。[10] 人を殺めるだけの、『殺人』プログラムであるならば、「壊す」という言葉を使う必要はない。「壊す」とは、脳スパコンという構造物を破壊するということを示唆しているのではないだろうか。




『母』= 藤治郎 説

次に、『母』の候補を考えてみる。
もちろん、未登場の人物である可能性も大いにあるが、ここでは既出の人物から当てはまりそうな人を探してみよう。

『母』の目的と最も合致しそうなのは、藤治郎である。以下がその理由である。

  • 「神のシナリオ」に対する十分な知識がある
  • 「神のシナリオ」を何としても阻止したいという意志が感じられる
  • 都雄を「駒」として使いそうな人物として最も当てはまる

 

藤治郎が『母』となった経緯として、次のような仮説を考えた。

  1. 現実世界で、藤治郎は「神のシナリオ」が完了するまでの過程で、妻のフィーアと子どもの都雄を失った。家族を守れなかった喪失感から、「神のシナリオ」を阻止できなかったことに強く悔いを残す
  2. 「神のシナリオ」が完了し、全人類が脳を抜き取られ巨大なコンピュータの一部となり、仮想空間へ移住する
  3. 藤治郎の脳の強い意志により、A3Wを再現した仮想世界が生み出される
  4. その世界で、藤治郎は『駒』として都雄をプログラムした。もし、仮想世界で「神のシナリオ」を阻止できる可能性が見つかったなら、都雄に全てを破壊させることを目的として。

 

物語には、「1000年」という時間スケールが出てくる。[11,12]
もし、Phase 1 = 仮想世界 で、現実世界では既に神のシナリオが完了しているならば、この時間スケールに、次のような意味を持たせることができる。

現実世界は、神のシナリオが完了してから、1000年後の世界である

「1000年後の物語」は、この仮説から想像してみた物語である。
根拠として提示できるものは現時点ではほぼ無いに等しいが、キコニア世界を解釈する一つの可能性として提示しておく。




セシャトについて一言

藤治郎と同じく、「神のシナリオ」を阻止する強い意志が感じられ、電脳チート能力を持つセシャト。彼女について少しだけ憶測をしておく。
もしかすると、彼女は、現実世界では、脳抜き工場の最初の犠牲者(脳スパコンの最初のパーツ)だったのかもしれない。
そのため、仮想空間では、例外的なチート能力持ちであり、かつ、第一犠牲者として「神のシナリオ」を阻止するという強い意志を持っていたのではなかろうか。




1000年の未来

「1000年」という時間スケールが登場するシーンの意味を考えてみる。
まず、地下研究所のフィーアのシーン。[11]

フィーアは、眼下の深淵に眠るそれのことを、それ以上は知らない。
原理も、意義もわからない。しかし、あの深淵は、翻訳を完全に終えた、完成品なのだという。
あのハッチの中に封じられた何か。それは、千年後の未来に、直結しているのというのだ。
つまりはまさにそれは千年後に通じる扉なのだ。

このタイムカプセルは、まだ起動していない。その中身はまだ、空っぽだ。
作ったからには、千年の後に何かを送る為に作ったはずなのだ。
しかし、中に収めるべきものが何なのか。それはまだ、翻訳されていない。
「千年後へのギフトボックス。一体、この中身にふさわしいのは何なのかしら? 人? モノ? 知識?」

地下研究所の1000年後へと繋がるという扉。
それは、『現実世界へ繋がる扉』なのではないだろうか?
仮想空間のA3Wの中に作られた仮想空間である(と予想される)地下研究所に、現実と繋がる扉がある、というのは何とも面白い世界構造だ。
1000年後へと何かを送るタイムカプセル。それは仮想空間で見つけた「何か」を現実世界へと送ることを意味する。
その何かについて現時点では分からないが、その「何か」が、物語を True end に導くための鍵となるのかもしれない。

次に、終盤のセシャトのシーンを考える。[12]

セシャト「あれあれ。意外にカワイイ寝顔だねー。まさか、無責任に。千年間も眠り続けるつもりー? 起こしに来たよ、寝坊助。あんたじゃなきゃ、あの二人は呼び戻せない」
セシャトはゆっくりと、手に握りしめたそれを掲げる。
指の間からは、暁の輝きにも似た光が、あふれ出していた。

これは、現実世界の if の世界(神の計画が完了する前)であると解釈する。
「千年間も眠り続ける」とは、脳髄を引き抜かれ、脳スパコンの一部となることを表しており、間際のところでセシャトがそれを止めにきた、という見方だ。
「あんた」と「あの二人」については決定的なことは何も言えない(未登場人物の可能性もある)が、例えば、「あんた」= 藤治郎、「あの二人」= フィーアと都雄、などと当てはめてみることもできる。




True endへの条件

以上を元に、「キコニアのなく頃に」で True end を迎えるための条件を提案しておく。

  1. まず、現実世界で「神のシナリオ」が完了していることから、何らかの方法で時間を戻す(もしくは違う世界線に移る)必要がある。そのスケールは1000年。「神のシナリオ」が完了する前から、全てをやり直すのである
    発動条件としては、仮想A3Wの地下研究所の1000年後(現実)に繋がる扉に「何か」を入れて送ることである(何を入れるべきかは現時点では不明)
    これで、ルールXYZの幻想描写 = 仮想空間 を脱却する
  2. そして、現実世界を巻き戻した後、「神のシナリオ」を止めるために、「あやつ = 脳スパコン」を破壊する
    これで、ルールXYZの絶対の意志 =「神のシナリオ」を阻止する
  3. さらに、ガントレットナイトの内通者を生み出す元凶を元から断つ
    これで、ルールXYZのランダム要素を克服する

これら3つが、True end(神のシナリオ阻止・ガントレットナイト全員生還エンド)に分岐するための必要条件である。




まとめ


以上、Phase 1の世界構造というゲームの中でも最高難易度と呼べる謎について、一つの解釈を述べてみた。まとめとして、以下に図で表しておく。

 

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“不死鳥”のなく頃に

最後に、本ブログのタイトルについて触れる。
竜騎士07は対談の中で「キコニアのなく頃に」というタイトルについて、「元は別のタイトルを考えていたが、作品の本質に迫りすぎるので、キコニアに変えた」と言っている。[13]

『電脳世界で永遠の命を手に入れ、1000年間の眠りにつく人民の脳』
『何度も新しい世界を生み出しては過ちを繰り返す人類』
この世界観は、まさに手塚治虫の「火の鳥(未来編)」のようだ。
仮想世界の中で、何度も死しては復活を繰り返す人類を思い浮かべて、
「不死鳥のなく頃に」というタイトルを想像してみた。

全ては、人類を正しく導く為に
All is in the name of guiding humanity down the right path.

……願わくば、最後には、人類を正しい方向へ導いて欲しいものである。




[1] 第13章 プログラムである理由: 脳抜き工場シーンの後
[2] 第25章 預言の刻: エンディング後
[3] 第13章 プログラムである理由: 青都雄と都雄の会話
[4] 第24章 天災のお子様ランチ: ケロポヨと都雄の会話の後
[5] 第22章 第2次世界同時停戦: 終盤、青都雄登場後
[6] ただし、青都雄は「都雄を消去するためのプログラム」と自称する一方で、「3人の王を、あやつを殺せ」などのヒントも与えている。単純に、都雄を消去することだけが目的ならば、これらのヒントを与える必要はないので、もしかすると都雄を助ける何らかの意図があるのかもしれない
[7] 第6章 人格混同の人権侵害: 青都雄と都雄の会話
[8] 第22章 第2次世界同時停戦: ジェストレスと3人の王の会話
[9] 第18章 神のシナリオ: セシャト「ゲームをしてるのは私たち? それともやっぱり、アイツかな?」というように、黒幕の存在をにおわせるようなセリフもある
[10] 第3章 お疲れ様大浴場: 青都雄初登場時の会話
[11] 第8章 第3の適性: フィーアと科学者の会話
[12] 第25章 預言の刻: エンディング後の一カット
[13] うみねこのなく頃に咲/キコニアのなく頃に リリース記念放送(YouTube)





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● Phase 1 の世界構造について(前編)

この記事では、いよいよ、Phase 1 の『世界構造』について触れていきたい。
世界構造の話をしだすと、限りなく『何でもあり』状態になってしまうため、そのことに触れることなく議論できる話題では、敢えて触れないようにしていた。
しかし、青い身体の都雄や、”母” の存在、1000年単位の出来事などについて議論するためには、『世界構造』についての言及は避けては通れなさそうである。
さあ、思考を柔軟にして考えていこう。




青い身体の都雄の存在

物語序盤で出てくる都雄の裏の人格(途中から身体が青くなるので以降「青都雄」と呼ぶ )は、この『ゲーム』は一筋縄ではいかなそうだ、とワクワクさせてくれる存在である。[1]

まず気になるのは、そもそもこの「青都雄」がどういう存在なのか、である。
・幻想なのか? 実体があるのか?
・敵なのか? 味方なのか?
・別人格なのか?

疑問は尽きない。




都雄はプログラムなのか?

「青都雄」は、都雄にこう説明している。(一部抜粋)[1]

お前はただの殺人プログラムなのさ。
君は、殺し、壊す、それだけを目的に生み出された存在なんだ。それ以外の全ての行為は、唯一の目的を達成するための過程でしかない。
君は、御岳都雄という名前を付けられた、ただの破壊の為の、プログラムにすぎない。

さらに、都雄と青都雄の次のような会話がある。(一部抜粋)[2]

青都雄「前に言ったろ。君は人格なんかじゃない。プログラムなんだよ。だから、僕という新しい人格がインストールして追加されたって、何もおかしいことなんかない」
都雄「俺はプログラムなんかじゃないし、ロボットでもない!! そうだという証拠を見せて見ろよッ。というか、お前もプログラムなんだろ?! じゃあお前は何のプログラムだって言うんだ!!」
青都雄「君を追い出すためのプログラムだよ」

都雄「俺は殺人プログラムじゃなかったのか?
 俺の敵はどこにいるんだよ。どこにも居やしない!!
 俺が殺人プログラムだっていうなら、とっとと俺に敵を与えてくれよ!!」
青都雄「僕は、君というプログラムを削除しようとする敵なんだよ?
 その僕がどうして、君の手伝いをしなくちゃならないんだい」[3]

これらの会話から、青都雄は、一貫して次の主張をしていることが分かる。
・都雄は、殺人プログラムである
・青都雄は、都雄を削除するためのプログラムである




ケロポヨの反応

さらに、気になるのはケロポヨの反応である。
次のようなシーンがある。(一部抜粋)[4]

ケロポヨ「お前は誰ぽよ、お前は誰ぽよ!! 承認のないプログラムを発見、発見!!」
青都雄「ち、めんどくさい」
ケロポヨ「非常召集、非常召集!!承認のないプログラムを発見、発見!! 太ぇやろうだ!! ここをケロポヨ様の縄張りと知っての狼藉かぽよぉ!!」

このように、ケロポヨは、青都雄を『プログラム』として認識しているようである。
さらに、次のようなシーンがある。(一部抜粋)[5]

都雄「おい」
ケロポヨ「何ぽよ?」
都雄「俺は、何なんだ? なぁ。俺は、本当に御岳都雄なのか? 俺はそうだと思わされてる、プログラムなんじゃないのか?」
ケロポヨ「ケロケロケロ、ケロケロゲーコゲコ! ケロッケロッ、ゲコゲコゲ!! ガッコピョン!」

都雄の問いかけに対して、ケロポヨは思い切り動揺したように暴れ回る。
あたかも「都雄がプログラムである」ことを知っていて、それを隠していたかのような反応だ。

この『プログラム』という言葉が、Phase 1 の『世界構造』を考える上で、非常に重要な鍵を握ると思われる。




Phase 1 = 仮想世界 説

都雄には意思もあるし、肉体もある。
その都雄が『プログラム』だとは、一体どういうことだろう?
もし、都雄が『プログラム』なのだとしたら、彼が生きている世界は一体何なのだろう?
ここでは、次のように考えてみよう。

都雄が生きているA3Wの世界は、実は『仮想世界』である。

大胆な仮説だが、アイデア自体は珍しいものではない。
「自分が生きている世界が、実は仮想世界だった」という展開は、SFでは良く使われる手法である。(例えば、映画「マトリックス」や「Hello World」など)
キコニアで、それを採用している可能性も十分考えられる。

Phase 1 の世界自体が仮想世界だとすると、青都雄の発言には筋が通る。
まず、「都雄がプログラムである」という発言。
全てが電脳化されている世界なら、その中に登場する人物を『プログラム』だと形容してもおかしくはないだろう。
また、「都雄」の中に「青都雄」という「新しい人格がインストールされる」という話も、電脳世界ならあり得なくはない。[6]

「Phase 1 の全てが仮想世界なら、これまでの考察、全部意味なくなるじゃん!!」と思うかもしれない。しかし、そんなことはない。
仮想世界だとしても、現実世界と『何らかの対応』がついている可能性はある。
肝心なのは、『仮想世界』だと仮定した時にどのような議論が展開できるか、だ。




鈴姬の金色のガントレットは、世界が仮想空間であることの暗示か?

ここで、鈴姬の「金色のガントレット」について改めて触れておく。[7]

鈴姬の「金色のガントレット」は地下研究所の青い少女たちのものと同じであった
→ 青い身体は、仮想空間への移住が完了したということを示す
→ すなわち、地下研究所は仮想空間である
→ それと同じガントレットを鈴姬が持つことができたということは、Phase 1 の A3W自体が仮想空間である

このような論理展開をすることができる。もちろん確実にそうだと言える証拠はないが、金色のガントレットは、Phase 1の世界構造に関するプレイヤーへのヒントなのかもしれない。




神のシナリオは、既に完了しているのではないか?

Phase 1 の世界が『仮想世界』だという前提で、もう少し話を進めてみる。

ある疑問が生じる。

そんな仮想世界、どうやって作ったんだ? という疑問である。
都雄が現実だと信じて疑わないような「仮想世界」。
そんな広大な世界を作ることは、果たして可能なのだろうか?

……いや、実にぴったり当てはまるものがあるではないか。
「神のシナリオ」だ。

全人類が移住して生きることのできる「仮想空間」。
それは、「神のシナリオ」そのものである。

もしかすると、現実世界では、もう既に「神のシナリオ」は完了しているのではないだろうか。
都雄たちは、そうと知らずに、すでに全てが電脳化された仮想世界のA3Wを生きているのではないか。
以下、この仮説をもう少し検証してみよう。




True end は存在しない?

一度ここで、ゲームマスター視点からメタ的な考察をする。
もし、「神のシナリオ」が完了し、全てが終わった後なら、都雄たちにとっては絶望的な状況だ。
彼らが救われる True end なんて、最初から存在しないのだろうか?

実は、このことに関しては、さほど深刻に悩まなくても良い。
元も子もないことを言うが、世界構造に関わる設定は、制作者の裁量一つで案外何とでもなってしまうからである。
例えば、何らかの方法で時を戻す方法を設けておいても良いし、これはあくまでカケラ世界の一つの可能性で真のルートでは……と物語を展開しても良い。
ひぐらし」のときのことを思い返せば、あながちあり得ない話でもないだろう。

逆に言えば、その絶望的な状況からの逆転劇を、自分たちプレイヤーが想像してみたって良いのである。重要なのは、そこに説得力があるかどうか、だ。

考えてみようではないか。「神のシナリオ」が既に完了してしまった世界からの、True end を。




青都雄の『預言』

青都雄は、都雄に対して様々な『預言』をする。[1] その内容を以下にまとめる。

  • 都雄は、コーシュカと鈴姬を殺害する
  • 鈴姬の殺害: 空中の白兵戦で鈴姬のリジェクションシールドが使えなくなる。都雄は力場を伴った拳で、鈴姫の頭部を打ち砕く
  • コーシュカの殺害: コーシュカは、都雄の誘導ミサイル群によって死亡する
  • 都雄は、ジェイデンとも激しく争い合う
  • 他のガントレットナイトたちも互いに激しく争い合う

青都雄は、これらは『預言』であるという。[8]

青都雄「”予言”というのは、未来を予想して語ることを指す。当たるかもしれないし当たらないかもしれない。でも”預言”というのは、神から言葉を預かるという意味なんだよ。神は全能。未来も全て知っている。だから、その神の言葉は、未来の”約束”も同然」

もし、Phase 1のA3Wが仮想世界で、現実世界では「神のシナリオ」が既に完了していた、という前提が正しいのなら、 これらの『預言』ができる理由として、次のような可能性が思い浮かぶ。

「A3Wの仮想世界は、現実世界で起こったことを再びシミュレートしている」

すなわち、ただの「仮想世界」ではなく、現実世界の過去と対応がついている、ということだ。
こう仮定すると、『青都雄が預言できた』ことに説明がつく。

青都雄の預言の内容(鈴姬やコーシュカの死など)は、『現実世界で実際に過去に起こったこと』だったのだ。


青都雄は、「都雄の死」についても言及する。[2]

君も僕もプログラムさ。
かつて存在した、御岳都雄という人間の魂の、模倣なのさ。これを見てごらん。
真っ暗な空間に、横たわった自分の姿が現れる。
全身はぐっしょりと濡れ、薄汚れていた。左腕にはガントレット
煤のその汚れ方は、かなり激しい戦闘に使用したことがうかがえる。
そして右側は。その顔は、紛れもなく御岳都雄の顔。
しかし、半分だけだ。左半分だけ。右半分。いや、頭部の右半分だけでなく右肩から先も全て。
青都雄「ご覧のとおりさ。御岳都雄は死んだんだよ。頭部を半分失ってね。」

これも、現実世界の都雄が実際に辿った顛末だとすると青都雄の発言の意図が理解できる。




『預言』をした意味

青都雄は何のために、『預言』をしたのだろうか?
単に、都雄を混乱させてその人格を壊す(プログラムを削除する)のが目的なら、あのように親切に情報を与える必要はないように思える。
青都雄は、都雄に情報を与えることで、彼の行動に何らかの変化があることを期待しているのではなかろうか?

実際、彼は、都雄の行動によって未来を変えることができる可能性を示唆している。[8]

青都雄「三人の王を。あやつを、殺すんだ」
みんな死ぬんだよ。その地獄を回避したくば、殺すしかないんだよ。
あやつを。それが無理ならば、君を。

上の発言を素直に受け取るならば、「3人の王を殺す(and?)あやつを殺す」もしくは「都雄自身を殺す」ことで、ガントレットナイトたちの死を「回避」できるようである。

もし、過去をそっくりそのまま再現しているだけであれば、地獄を「回避」することなどできない。
このことから、この仮想世界は、過去と全く同じ世界を再現しているのではなく、「過去をベースにしたシミュレーター」のようなものだと捉えることができる。都雄の行動次第で、Phase 1の世界は異なるエンディングに分岐する余地がある、ということだ。もしかすると、全てが終わってしまった現実世界で、仮想世界を生み出している、何らかの存在がいるのではないか? その存在は、仮想世界というシミュレーターを何度も使って、現実世界の人類が辿った結末を回避できたかもしれない別のルートを探しているのかもしれない。そしてそれが、キコニア世界のゲーム盤(Phase 1, 2, 3…)なのかもしれない。




コーシュカの最後のシーンが意味するもの

預言が必ずしも当たらない可能性を示唆することとして、Phase 1最後のコーシュカを挙げる。[9] 青都雄の預言では、コーシュカは都雄のミサイルによって死亡するはずだった。しかし、その様子は描写されなかった。もちろんあの後、都雄がミサイル攻撃するのかもしれないが、あの終わり方は、コーシュカだけ、何らかの別のエンディングに分岐したようにも捉えられる。
肉の身体を捨て、新世界へと旅立ったコーシュカ。あのシーンは、「預言は必ずしも当たるわけではない」という制作者からプレイヤーへのヒントだと見ることもできる。




以上、Phase 1 が『仮想世界』だと仮定した上で考え得る事柄を述べてきた。

後編では、その『仮想世界』を生み出している存在『母』などについて、さらに踏み込んだ議論を行う。




[1] 第3章 お疲れ様大浴場: 青都雄初登場のシーン
[2] 第13章 プログラムである証拠: 青都雄と都雄の会話
[3] 第24章 天災のお子様ランチ: 青都雄と都雄の会話
[4] 第22章 第2次世界同時停戦: 終盤、青都雄登場後
[5] 第24章 天災のお子様ランチ: ケロポヨと都雄の会話
[6] ここでいう「人格のインストール」は、「内通者は誰だ?」で議論した「スパイ人格」の話とは全く性質が異なる。「スパイ人格」は「黒幕が人工知能によるスパイ人格という技術を開発した」と現実世界の中で完結できる話だが、今回は「そもそもこの世界が仮想世界であり、世界の上位階層の何者かが、青都雄をインストールした」という世界構造に関するメタ的な前提が必要な話である。
[7] 第25章 預言の刻: エンディング手前、都雄と鈴姬の戦闘
[8] 第6章 人格混同の人権侵害: 青都雄と都雄の会話
[9] 第25章 預言の刻: エンディング後の一カット
[*] 「キコニアのキャラクターの立ち絵が反転するのは全員アバターだからだ」という説がある。筆者は初プレイ時、立ち絵の反転に強い違和感を感じたが、もしそれが仮想世界の伏線になっているとしたら、と考えると非常に面白い



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