"不死鳥" のなく頃に

「キコニアのなく頃に」考察【ネタバレ有】

● 都雄は男の子? 女の子?

ミャオは、ジェイデンに「クリスマスになったら、都雄(の身体)の性別を教える」と言った。[1]
だが、クリスマス当日、それは叶わなかった。

結局、都雄は、男なのか、女なのか?
ミャオとジェイデンのやり取りに、やきもきされられたプレイヤーたちにとっては気になるところである。今回はこのことについて、筆者の考えをまとめてみる。



前提と結論

さて、都雄の性別の話をする前に、次の説に触れておく。

「ミャオと都雄は同一別格」説

この説は、ミャオと都雄が同一別格であり、都雄がもう一人の自分をミャオとして演じ分けている(=ミャオは自演である)というものである。[2]
この説には賛否両論あり、「ミャオというキャラクターをプレイヤーの一存で否定し消し去って良いのか?」という問題提起もされている。
だが、それでもなお筆者はこの説を支持している。(理由は後ほど述べる)
この同一別格説を前提に、結論から先に書こう。

都雄の性別は【女】だというのが筆者の考えである。

直感的な理由としては、竜騎士07の文の行間から察した[3]というところがあるが、ここではそれらを根拠にはしない。

都雄が女の子であると仮定した方が、色々と腑に落ちる事(+面白そうな展開)が多かったのである。

では、そう仮定した場合、どうなるのか?

話を進めていこう。



男の子として育てられた都雄

藤治郎は、「都雄」という名前をつけている。
また、藤治郎のTIPSでは、都雄のことは「息子」と記されている。[4]

都雄の性別が女であるという仮定は、これらと矛盾しないだろうか?
まず、このことについて検討してみよう。
ここでは、次のように考える。

藤治郎は、「女」として生まれた自分の子どもを「男」として育てた。

実際は女の子であったが、藤治郎はわざわざ「都雄」という名前をつけたのである。
TIPSは、藤治郎が都雄を男として育てたことを反映して「息子」という言葉になっているだけだ。

なぜ、藤治郎は都雄を男の子として育てる必要があったのか?
この理由について、決定的なものを挙げることは出来ないが、藤治郎に何らかの目的があったのではないかと推察することはできる。
藤治郎は、都雄をガントレットナイトにするためにあらゆる手を尽くしているため、「男」として育てた方が何か有利になる点があったのかもしれない。[5]




都雄の秘密

〜ここから先は、憶測で話を進めていく〜

都雄は、自分が男の子として育てられることに特段の不満はなかった、と思われる。
ガントレットナイトに強く憧れていたということから、藤治郎の教育方針を受け入れたのかもしれないし、元々の勝気な性格もあって、男の子として振舞うのが性に合っていたということもあるのかもしれない。

ただ、不満はなくても、やはり中身は年頃の女の子である。
たまには、女の子として振る舞いたくなる時だってある。
お洒落をしたり、女の子らしい格好をして街に出てみたくなる時がある。
そんな時は、こっそりと化粧をして、誰にも見つからないように、街に出ていくのだ。
それは、誰にも言えない、都雄だけの秘密だった。



ミャオの誕生・ジェイデンと遭遇した日 [6]

その日も、都雄は化粧をして、誰もいなさそうな街外れのゲームセンターに遊びに来ていた。
すると、突然、キズナの通知が入る。

どうやら、偶然、同じゲームセンターにジェイデンが来ていたようである。
都雄は焦る。「しまった! まさか、あの人だかりの中心にいたのがジェイデンだったとは……」
当然、都雄は、自分が女の子であることなど今までジェイデンに言ったことはないし、これからも言うつもりはなかった。同性の相棒というフラットな関係でいるのが、ガントレットナイトとしてベストだ、と考えているからだ。
「こんなところを見られたらまずい!」都雄は焦って、キズナをオフにし、その場から逃げる。
女の子らしい容姿で全速力で走る気にもなれず、シャカシャカと早歩きで逃げる。

しかし、ジェイデンに気付かれてしまい、外に出たところで追いつかれてしまった。
肩を掴まれ振り向かされ、頭の中が真っ白になる都雄。
「お前、都雄だろ?」と聞かれ、とっさに「都雄じゃない」と答える。
でもそれ以上どうしたら良いのか分からず、黙ってうつむくことしかできない。
ところが、ジェイデンはそんな都雄を見て何を思ったのか、都雄の中に女の子の別人格がいるのだと勘違いしてくれたようである。
「お前、もう一人の人格なんだろ?」
そう言われて、都雄は戸惑いながらも頷き、その勘違いに乗ることにした。
ジェイデンは「名前を教えてくれないか?」と尋ねる。
都雄はとっさに何か答えようとするも、何も思いつかない。どうしよう。
パニック状態の自分の口から漏れ出たのは「都雄」という答えだった。
バカ、何で俺は自分の名前をそのまま呟いてるんだ!!と内心焦る都雄。
ところが、あまりに小さな声で呟いたため、それがジェイデンには「ミャオ」と聞こえたらしい。
じゃあ、そういうことにしよう。

今ここにいるのは、都雄の妹人格のミャオ。
ジェイデンの勘違いに乗っかって、その場を乗り切った。
そんな成り行きで、「ミャオ」という架空の人格が作られたのだった。



ジェイデンへの恋心

男の子として育てられた都雄だが、その心は年頃の女の子。
同じく年頃の男の子であるジェイデンに、どことなく心惹かれることも度々あった。
だが、自分はあくまで男の子としてジェイデンと接するのがベストなのだ。
そう言い聞かせて、淡い恋心は、自分の胸の内に封印することにしていた。

ところが、あの日、ジェイデンに女の子の自分の姿を見られたことで、その封印は解かれてしまった。その日から、都雄は葛藤に悩まされることになる。
ガントレットナイトが色恋沙汰に浮かれている場合ではない」という男の子としての気持ちと、「それでも恋愛してみたい」という女の子としての自分の気持ちのぶつかり合いによる葛藤だ。

そんな都雄の気持ちも知らず、ジェイデンは都雄にデレデレしてくる。[7]
彼の無神経さにイライラする気持ちと、いっそ全部打ち明けてしまえたら……という気持ちが、同時に膨れ上がっていく。「相棒」として付き合いたい自分と、「恋人」として付き合いたい自分。都雄とミャオが喧嘩するシーンは、人格同士の喧嘩ではなく、都雄自身の心の中の葛藤がそのまま外に現れたものなのだ。
……このままでは、胸が張り裂けてしまう。
ある日、ジェイデンと、都雄の身体の性別の話になったとき、都雄は心を決める。

クリスマスの日に『賭け』をしよう。
賭けに勝ったなら、ジェイデンに全てを告白し、女として恋を成就させよう。
賭けに負けたなら、ジェイデンに自分は男だと伝え、恋愛的な関係は完全に諦めよう。

ジェイデン君。きっと、私の身体のこと。打ち明けるから。
でもね、もうちょっとだけ、心の準備がしたいの。だからね……んっと、クリスマス。
クリスマスになってもまだ、私たちがお互いに、こういう気持ちのままで一緒にいられたなら。その時に、打ち明けるね。 ——ミャオ





クリスマスの日の『賭け』

クリスマス当日のミャオは、明らかに様子が怪しかった。[8]
ジェイデンに、突然クリスマスパーティを開催したいと持ちかけ、ミャオがそう提案したことは都雄には秘密にしてほしい、と言った。
なぜミャオは、そんな話を持ちかけたのか?
その後の悲惨な展開も相まって、あのミャオは黒幕と繋がっているではないかとすら思える。
が、ここでは、それとは別の可能性として 都雄が恋愛的な『賭け』をしていた説を挙げる。

賭けの内容: 
ジェイデンに、「ミャオと都雄が同一人格であることに気付けるような小さなヒント」を与える。
ジェイデンがそのこと気付いたなら勝ち。気付かなければ負け。

手順:

  1. 「都雄には内緒」だと言って、何らかのイベント(クリスマスパーティでなくても何でも良い)を開催する計画をミャオからジェイデンに持ちかける
  2. その後、都雄が、ミャオとジェイデンしか知り得ないはずの情報を知っている。そんなヒントをジェイデンに密かに与える
  3. ジェイデンがそのことに気付いて、「ミャオと都雄は同一人格なのだ」という結論に至れるかどうか試す
  4. ジェイデンが気付けば、勝ち。都雄はその時点で、全ての真相を打ち明け、恋を成就させる
    逆に、制限時間内(同日中)に気付かなければ、負け。都雄はその後、恋愛的な想いの一切を断ち切る




今後のPhaseの予想

以上の仮説が正しければ、ジェイデンの「都雄は男か女か?」という問いに、ミャオは、Phaseによって「男」と答えたり「女」と答えたりするはずである。
それは、ジェイデンと男(相棒)として付き合うか、女(恋人)として付き合うか、都雄の気持ちが揺れ動いている証拠である。
ミャオの回答は、そのPhaseで、都雄が『賭け』に勝ったか負けたかで決まる。

(例:ネオ東京ラブストーリー記事へ)

Phase. 2では、プレイヤーをミスリードする狙いで「男」と答える展開になる、と予想しておこう。




青い身体のジェイデンのシーンについて

最後に、ラストの青い身体のジェイデンのシーンについて、恋愛的な面から考察をしておく。青い身体のジェイデンは、都雄に次のような言葉をかける。

都雄ちゃん約束したろ? お前とならどこへだって一緒だって  [9]

筆者は、青い身体は「仮想空間への移住が完了した状態」を表すと考えている。
すなわちこのシーンは、ジェイデンが都雄と共に仮想空間へ移り住むところだ、という解釈である。

多重人格者が仮想世界へ移住するとき、その人格はどうなるのだろうか?
Phase 1では、複数の人格が仮想世界で同時に現れているような描写はなかった [10] が、だからといって、それが不可能だとは限らない。複数人格の言動を一つの脳で並列処理できるのであれば、それぞれの人格が異なるアバターを用いて一つの仮想空間に同時に存在できてもおかしくはない。
もし、これが可能なら、恋する多重人格者にとって、これ以上の救いはないだろう。現実世界のように一つの身体を奪い合って悩む必要はない。仮想世界なら、肉体の束縛から離れ、異なる恋を同時に成立させることができるのだから。

ジェイデンは、「もし仮想空間に移住するとしたら」という話題が出たときに、ミャオと都雄の両方を誘っていたが [11]、ミャオと都雄がもし別人格なら、仮想空間では、それぞれ、別人として付き合うことができるのかもしれない。
逆に、この記事の予想通り、ミャオと都雄が同一人格なら、ジェイデンがラストのシーンで声を掛ける相手はただ一人、「都雄ちゃん」である。




[1] 第7章 3人の王: ミャオとジェイデンのデート時に、ミャオが約束する
[2] 同一人格説の根拠としては
・藤治郎から、ミャオについて一切の言及がない

・青い身体の都雄からも、ミャオについて一切の言及がない
・Frag.12でミャオが出てこないのは不自然
・Frag.14で都雄が、後輩たちに厳しい指摘をすることについて、「一応、ボコボコにした後にはフォローもいれてんだぜ」 と発言している(フォローするのはミャオの設定だったはず) など

同一人格説考察ブログ参考:
皮膚セレブ 都雄とミャオについて(しめりけおじさん様)
Maggie キコニア妄想、都雄=ミャオ説(7go's Ownd様)
ちとせあめ キコニア:都雄とミャオ(なごみ様)
[3] ざっと挙げておく

・第5章: 都雄のデザートの盛り付け方が綺麗
・第4章: ジェイデンが都雄を振り向かせたときの「華奢な肩」
・第6章: 都雄は「運動をしない」
・第6章: ジムのシーン・都雄は身体能力的にはジェイデンに敵わない

・第9章・Frag.7: 都雄は「猫動画」が好き

・第21章: マリカルメンが指摘する都雄の「いい臭いのシャンプー」と「きめ細かい肌」

・第21章~: 藤治郎の溺愛ぶりが息子でなく娘のそれ

・Frag.12: ジェイデンからのメールの返信待ちの様子がどう考えても乙女

[4] 藤治郎TIPS「息子が大好きすぎて、脳内の画像フォルダは都雄の0歳からの写真でいっぱいだ」とある
[5] 推測を挙げるなら、例えば
・藤次郎は、女の子を男の子として育てることで、幼少期から脳の並列処理の訓練をさせていた
ガントレットナイトは女の割合が多いため、男の方が競争率は比較的低い(という可能性)
・人体実験のリスク回避:(ex. パンドラの人体実験に使われるのは少女ばかりであった:第6章)
など
[6] 第5章 パラレルプロセッサー
[7] 第5章 フィーア・ドライツィヒ: スイーツ反省会以降のジェイデン
[8] 第25章 預言の刻: ミャオからジェイデンにクリスマスパーティの提案
[9] 第25章 預言の刻: 最後の青ジェイデンのシーン
[10] 一つの可能性としては、「3人の王」は一人が持つ3つの人格を仮想空間の3つのアバターとして設定したものである、という説が考えられる
[11] 第25章 預言の刻: ジェイデンはクリスマスパーティで仮想空間の話題が出たとき、ミャオと都雄を誘う。
(ミャオに対して)「ミャオちゃんと一緒ならどこへだって行くぜ」
(都雄に対して)「お前は俺と一心同体だろ。どこまでも最初っから一緒だよ」





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